遺言のすすめ

【遺言の必要性】

遺言というと、これから死をむかえる人が書き残すものというイメージがあり、まだ自分には関係がないという思いがあるかもしれません。

ただ、遺言は自分の死後に残すことのできる貴重な意思表示の手段となります。
・自分の意思のとおりに財産を処分したい。
・相続人同士が遺産をめぐって無用な争いが起こることを避けたい。
このような思いから、積極的に遺言を利用しようというケースが多くなっています。
また、最近では若いうちから遺言をつくっておくという人も増えてきているようです。

遺言をつくることによって、法定相続分にこだわらない分割を指定することができます。
法定相続人以外の人に財産を残すことができます。
相続人同士の無用な争いを避ける効果があります。

特に次のようなケースでは、争いが起きる可能性がありますので、遺言を残すことが有効になります。
[子どもがいない場合]
被相続人に子どもがいない場合に、すでに父母も亡くなっていたとすると、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。
そして、兄弟姉妹の中にも亡くなっている方がいると、その子どもである甥や姪が相続人となります。
関係の遠い甥や姪が絡む相続は、争いが生じる可能性が高くなりますから、このような場合には遺言を残しておくことが有効だといえます。
兄弟姉妹には、遺留分がありませんから、兄弟姉妹には財産を残さない旨の遺言をすることもできます。
[離婚している場合]
離婚していて、前の配偶者との間に子どもがいる場合、前の配偶者は当然相続人ではありませんが、子どもは相続人になります。
今の家族との間で争いが生じる可能性がありますから、このような場合には遺言を残しておくことが有効です。
[相続人以外に財産を残したい場合]
内縁の夫・妻、世話になった長男の嫁など、法定相続人ではない人に財産を残したい場合には、遺言がないと実現できません。
【遺言の注意点】
[遺言ができる人]
満15歳に満たない者は、遺言書を作成することができません。
[共同遺言は無効]
いくら仲の良い夫婦であっても、一つの遺言書で2人分の遺言を書いてはいけません。無効になってしまいます。
[日付が新しいものが有効]
自筆証書遺言は簡単に何度でも作り直すことができます。
二つ以上の遺言書が存在し、内容が矛盾する場合は、後の内容が有効とされます。
混乱を避けるため、遺言書を書き直したときは、古いものは確実に破棄しましょう。

【遺言の種類】
遺言には次のとおり、いくつかの種類があります。
[普通方式]
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
[特別方式]
一般危急時遺言
難船危急時遺言
伝染病隔離時遺言
在船時遺言
これらのなかでは、自筆証書遺言と公正証書遺言が一般的に用いられることが多いものです。
【自筆証書遺言】
自筆証書遺言は、一定の要件さえ満たせば、特別な手続も必要ないため、最も簡易な遺言の方式といえます。

[メリット]
一人で作成できる。
いつでも作成できる。
遺言をしたこと、遺言の内容を秘密にすることができる。
特別な手続は必要ないため、簡易で費用もかからない。
[デメリット]
偽造、変造、破棄、隠匿の可能性がある。
紛失する可能性がある。
方式に不備があると、遺言が無効になる。
家庭裁判所で検認を受けなければならない。
【公正証書遺言】
公正証書遺言は、公証人が作成するもので、内容が明確で方式も確実ですが、一定の手続が必要となるためやや面倒です。また作成には手数料がかかります。

[メリット]
公証人が作成するため、内容が明確、方式が確実、証拠力が高い。
原本を公証人が保管するため、偽造、変造、隠匿のおそれがない。
検認手続を必要としない。
[デメリット]
公証人が関与するため、作成までに手間がかかる。
証人二人以上の立ち会いを要する。
遺言の存在や内容を秘密にすることができない。

公証人には守秘義務が科せられています。また、当事務所に依頼いただいた場合には、行政書士が証人になります。行政書士にも守秘義務が科せられています。

一定の費用がかかる。


【自筆証書遺言】
自筆証書遺言を作成するためには、次の要件を満たす必要があります。
それ以外は基本的に自由に作成することができます。
[要件]
全文を自筆で書くこと。
鉛筆は避け、ボールペンや万年筆など簡単に消えないものがよいです。
ワープロやタイプ打ちでは不可です。
名前を書くこと。
本人を特定できる名前を書くことが必要です。
ペンネームであってもそれが本人であるとわかるものであれば有効です。
また、「誰某の父」などと書いた場合でも、その人を特定することができれば有効です。
本名を書くのが最も確実な方法ですから、特別な事情がない限りは本名を書くようにしましょう。
作成した日付を書くこと。
日付を特定できることが必要です。
「平成18年8月4日」というように書くことが最も確実です。
「還暦を迎えた日」や「銀婚式の日」などは可ですが、「平成18年8月吉日」と書いた場合は、日が特定できないため不可です。
印鑑を押すこと。
認印でも無効ではありませんが、後の争いを避ける意味でも、実印の方がより確実だといえます。
以上の要件が備わっていれば自筆証書遺言として有効です。

[封入について]
封筒などに入れて閉じなければ無効ということはありませんが、当然した方が安全です。
封筒には、「遺言書在中」と氏名を書いておくとよいでしょう。
[保管場所]
せっかく遺言書を作っても、発見されなければ意味がありません。
発見されるであろう場所を選んで保管することが大切です。

【公正証書遺言】
公正証書遺言を作成する場合には、一定の手続が必要になります。
[あらかじめ準備すること]
遺言の内容をまとめたメモなどを用意します。
資料として次のものを用意します。
遺言者の印鑑証明書
相続人との関係がわかるもの(戸籍謄本、除籍謄本など)
相続人以外の人に財産を遺贈する場合には、その人の住民票など
土地、建物の登記簿謄本、固定資産評価証明書
預貯金の通帳、株券など
証人が2人必要です。信頼できる方にお願いしましょう。
証人の住所、氏名、生年月日、職業がわかるメモなどを用意します。
遺言作成当日までに、あらかじめ公証人と打ち合わせを行います。
作成日に証人2人とともに、公証役場へ行きます。
遺言者の実印、証人の認印が必要です。
原本、正本、謄本が作成され、原本は公証役場にて保管され、正本と謄本を受け取ります。
[作成にかかる費用]
証書の作成手数料
相続財産の額(注1) 手数料
〜100万円 5,000円
〜200万円 7,000円
〜500万円 11,000円
〜1,000万円 17,000円
〜3,000万円 23,000円
〜5,000万円 29,000円
〜1億円 43,000円
1億円を超える部分については、以下のとおり加算されます。
〜3億円 5,000万円ごとに
13,000円加算
〜10億円 5,000万円ごとに
11,000円加算
10億円〜 5,000万円ごとに
8,000円加算
(注1)相続人ごとの額です。
遺言手数料
相続財産が1億円までの場合、11,000円の遺言手数料がかかります。
用紙代
1枚ごとに250円の用紙代がかかります。
原本、正本、謄本のうち、原本の4枚までについてはかかりません。
その他の費用
入院等で公証役場へ行けない場合には、公証人に来てもらうことができます。
この場合、手数料が1.5倍の額になります。また、日当、交通費がかかります。
[手数料の計算の例]
5,000万円の相続財産を1人に相続させる遺言の場合
手数料 遺言手数料 用紙代 合計
29,000円 11,000円 枚数分 40,000円
+用紙代

5,000万円の相続財産を2人に均等に相続させる遺言の場合
手数料 遺言手数料 用紙代 合計
23,000円
23,000円
11,000円 枚数分 57,000円
+用紙代

2億円の相続財産を1人に相続させる遺言の場合
手数料 遺言手数料 用紙代 合計
69,000円 --- 枚数分 69,000円
+用紙代

2億円の相続財産を4人に均等に相続させる遺言の場合
手数料 遺言手数料 用紙代 合計
29,000円
29,000円
29,000円
29,000円
--- 枚数分 116,000円
+用紙代